2022.07.10 第50回九州サッカーリーグ第15節 vs川副クラブ マッチデイニュース 柳田健太選手インタビュー
90分ハードワーク怠らず
今季フル出場、覚悟胸に
町民、地域へ夢や希望を
献身的に体を張り、精力的に右サイドを懸け上がる。90分間そのハードワークを怠らない。ヴェロスクロノス都農の右サイドをけん引するSB柳田健太。これまでの計11試合でフル出場を果たし、チームにとって決して欠かすことができない存在だ。推定走行距離110キロに及ぶ990分を振り返り「身体的、精神的なきつさは感じない。気合いを入れ、チームのためいつも100パーセントの状態で臨めている」。心身両面でタフな26歳は、頼もしく言い切る。
オフシーズンのトレーニングが豊富な運動量を支えている。筋力トレーニングに加え、心肺機能に負荷を掛ける走り込みに努め「みんなと同じ、特別なことはしていない」と控えめだが、培われたスタミナとけがをしない体は、プロサッカー選手としての誇り、中心選手としての責任感を持って取り組んでいる証しだ。
JFL昇格を掲げた今季、全勝街道を走ってきた。だが、6月の前期を締めくくる大切な2連戦で、FC延岡AGATAと引き分け、沖縄SVに初黒星を喫した。内容的には勝っていた感覚があったからこそ、わずかなほころびが生じた失点シーンを回想すると余計に悔しさがこみ上げた。
「沖縄との試合が終わってから1、2時間はメンタル的にきつかった。
でもリーグはまだ終わっていないし、(JFL昇格につながる)全社(全国社会人大会)もあるんだと発することで気持ちを切り替えた」と言う。
熊本県益城町出身。小学2年生でサッカーを始め、中高の6年間はロアッソ熊本アカデミーで過ごした。セレクションをくぐり抜けて集まった実力者たちと競い合い、技や走力、心を磨き、ポゼッション能力や運動量、クロスの精度を買われ、DFに定着した。CBとして着実に成長を遂げ、プロを目指す意識も芽生えた。大学サッカーの強豪・びわこ成蹊スポーツ大に進み、「体のサイズがない分、筋力をつけた」という努力の甲斐あって、2年生からレギュラーを獲得した。
卒業後はJFL奈良クラブに加入し、1年後に夢だったJ3カマタマーレ讃岐入り。2年間で計41試合に出場した。だが、契約満了となり、トライアウトを受けたものの、Jでの競技生活の続行は厳しかった。もちろん未練はあったが、今一度、下部リーグで自身を磨くことを決心し、出身地に近いヴェロスクロノス都農で新たなサッカー人生を踏み出した。
大学3年だった2016年、出身地は最大震度7の巨大地震に見舞われた。実家は大規模半壊。家族は約1カ月、車中泊を余儀なくされた。「帰省しても何もできないから、気にせずに頑張れ」。生活すらままならない状況下に置かれても、両親はサッカーを応援してくれた。その思いを忘れず、感謝し、サッカーを中心に親孝行していくことを誓う。
地域おこし協力隊として農作業に励む、都農町での生活は2年目を迎えた。愛娘2人もすくすくと成長し「人が温かくて、子育てにも最適なところ。本当にありがたい」と話す。だからこそ、町民、地域の方々に夢や笑顔を届けたい気持ちは強い。「結果でしか恩返しはできない。JFLに上がって都農町を全国に広める」。リーグ制覇に最後まで挑み続ける姿勢と、全社での快進撃…。「今シーズンフル出場」の覚悟を胸に、全身全霊をかけてチームの躍進に貢献する。
「2022.07.10 第50回九州サッカーリーグ第15節 vs川副クラブ マッチデイニュース 柳田健太選手インタビュー」より加筆・転載。
文:鳥原 章弘 写真:中村 武史
- 2022.07.10
- 選手・スタッフ