キャプテンシー 背中で見せる
ボールに絡み、仲間を鼓舞
ホーム最終戦、躍動する姿を
背中で見せるキャプテンシーで、ヴェロスクロノス都農を束ねるMF大竹隆人。プレー面では積極的にボールに絡んでハードワークを惜しまず、ピッチ外では自然体で接して的確な助言を行う。性格も、実績も、歩みもそれぞれ異なる個性的な集団をまとめる立場だが「同い年の(谷口)堅三や(曽我部)慶太にも支えられ、楽しみながら役割をこなせている」。キャプテンとなり3年目、すっかり都農の「顔」となった34歳は、チームファーストを胸に日々全力で戦っている。
JFL昇格を掲げた今季、全16試合スタメン出場。ここ数年で最も軽快な動きを見せている。「(小寺真人)監督のやろうとしているサッカーが楽しい。一つ一つの練習に意味があるという指導を心掛け、プレーの質の向上につなげている」。攻めては好機の起点となり、守っては素早く体を寄せてピンチの芽を断つ。常に考えながら動く、そんな献身的な働きにリーダーとしての自覚が漂う。
ただ、チームの結果が比例せず、もどかしさを感じている。チームの質も個々の能力も上がり、それぞれが士気高く臨んだ今季。だが、九州リーグ通算成績は13勝2分け1敗の2位。4年ぶりの頂点は厳しい状況となり、「ボールを握って、自分たちでボールと相手を動かしていくのがプレースタイル。それが出来ていない時間帯に隙をつくってしまい失点している。90分やり通す力をつけないといけない。気持ちで負けている」。自覚とともに責任も感じ、九州予選を勝ち抜き出場権を獲得した全国社会人選手権(10月・鹿児島)に向けて巻き返しを誓う。
東京都目黒区出身。小1でサッカーを始め、中高は名門の三菱養和SCで技術を磨いた。実力者集団の中でもまれて力をつけ、国士館大時代は「夏は朝、昼、夕方の3部練。上下関係も厳しく心身両面で鍛えられた。根性がついた」と言い、「大学時代を思えば少々のことは何でもない」と笑う。その後はFC町田ゼルビア、藤枝MYFCとJチームを渡り歩き、通算135試合に出場。「ただただ、がむしゃらだった」。生きるか死ぬかの環境に身を置き、貴重な経験を積み、次なるステージへの選択を迫られた時に当時のJ.FC宮崎が目に留まった。
妻ともども都会生活から離れ、自然豊かなのどかな土地で新たなサッカー人生を始めて3年目。「隆人」と親しみ込めて呼んでくれるファンも増え、地域おこし協力隊農業班の業務で知り合った農家の方も年々多くなり、「いろんなことを学ばせてもらっている」と充実した日々を過ごす。加えて、「子育てするのにいうことのない環境」と話し、元気いっぱい伸び伸びと育つ愛娘2人の成長も何よりの喜びだ。
小中高、大学と「キャプテンのタイプではなかった」と言い、ヴェロスクロノス都農で初めてリーダーを担った。「農家さんや町民と触れ合う中で応援してくれる人たちが多く、責任みたいなものを感じた」と、町民の期待の大きさが伝わってきたことも主将を引き受けた理由の一つという。だからこそ結果で恩返ししたい気持ちは人一倍だ。
この日のホームゲーム最終戦を含め今季の九州リーグも残り4試合。前回のホーム戦はドローに終わり「応援してくれる農家の皆さん、町民、ファンの皆さんに個人としてもチームとしても力を与えるゲームを見せられなかった」と反省しきり。悔しさを胸に「ホーム最終戦は必ず躍動する姿を見せ、元気や勇気を届ける。来てくれた人みんなが笑顔で帰れるような試合を見せたい」。ひた向きな姿勢で仲間たちを鼓舞し、「有終の美」を飾る覚悟でいる。
2022.07.10 第50回九州サッカーリーグ第15節 vs川副クラブ マッチデイニュース 柳田健太選手インタビュー」より加筆・転載。
文:鳥原 章弘 写真:中村 武史
- 2022.08.27
- 選手・スタッフ