夢に届きそうで、届かなかった昨シーズン。
ぶつけようのない悔しさと喪失感に襲われながらも、それでも諦める選択肢はなかった。
そして迎える今シーズン、懸ける思いは強い。
これまで支えてくれた全ての人たちへの感謝を胸に、勝負のシーズンに挑む小寺監督に話を聞いた。
頂を獲りにいく覚悟のシーズンが始まる
―遂に新たなシーズンが開幕しますが、現在(※2/20当時)の調整状況はいかがですか?
昨シーズンからメンバーはそこまで大きくは変わっていないので、ベースを維持しながら調整できています。今週末に同カテゴリーのライバルとの練習試合が2試合あるので、そこで力試しができると思います。今季初めて選手1人あたり90分プレーができる機会なので、昨季の課題を踏まえて、新シーズンに向けた最終調整に取り組めると思います。
―ベースを維持できているとお話しが出ましたが、昨シーズンから上積みできた部分はどんなところでしょうか?
やはり、得点力ですね。昨シーズンの前半戦は点が取れていたんですが、失点も多かった。なので、後半戦に向けては、「失点を減らす」という数値目標を掲げて取り組みました。幸い、シーズン後半戦から全社(※1)、地決(※2)を含め、失点の部分の目標は達成できたんです。しかし、代わりに得点も少なかったことで、勝ち上がることができず、悔しい思いをしました。
今シーズンは、主導権を握りながらしっかりと得点の取れるチームを目指して、戦術などを落とし込んでいます。
※1 全国社会人サッカー選手権大会
※2 全国地域サッカーチャンピオンズリーグ
―攻撃面で変化を加えた部分を、もう少し詳しく伺いたいです。
昨シーズン、実は2敗しかしていないんです。ただ、それでも勝ち上がれなかった。この厳しいカテゴリーで勝っていくには、やはり得点力を確実に付けなければいけません。
「どんな相手でも2点取る」という結果・数字にこだわって取り組んでいく必要があると感じました。
それを踏まえ、試合中の局面を切り取り、「どうやって点を取るか」にフォーカスしながら、攻撃時の共通意識や必要な技術を確認し、繰り返しトレーニングを行っていますね。成果がでるかどうかは、試合をしてみなければ分かりませんが、手応えは感じています。
昨年の全国社会人選手権、FC刈谷との試合ではPK戦にもつれ込み感情が爆発する場面も
チームの“変化”を、“進化”へと昇華する
―今シーズンは、元選手の曽我部慶太がコーチに就任するなど、コーチ陣も入れ替わりました。期待はいかがでしょうか?
それぞれの専門分野で自分の知見を生かしてチームに貢献してほしいです。話に出た曽我部慶太は、選手としての感覚が強く残っていると思うので、自分よりも選手に近い立場から、個人にフォーカスして伸ばしていくことに期待しています。
―より環境が整ったというイメージでしょうか?
そうですね。選手全員、シーズンが終わった後に成長できたと思えるシーズンにしたい。それには、コーチ陣の力っていうのは非常に重要になってくると思います。
―新加入の選手たちへ期待することはなんでしょうか?
それぞれの特徴を最大限に発揮して、チームにプラスを与えてほしいです。プレシーズンの間にチームのやり方を頭に入れ、体に覚えさせて、プレシーズン終わる頃には考えずにプレーできる状態まで持っていってほしいです。
―今回の補強に関しては、関係者にどんな要望をされたのでしょう?
抜けた部分をしっかりと補える、それに代わる選手を獲得することは要求していましたね。あと一つは、スピードのある選手を希望していました。昨シーズンのメンバーがほぼ残っているということが一番の補強だと思っているんですが、そこにまた違った特徴をチームにプラスしてくれることを期待しています。
―“スピードのある選手”を希望した理由を教えてください。
現状、酒井信磨や中山雄希、松本幹太など速い選手はいるんですが、やはり消耗が激しいのも事実です。短期間で連戦を戦う上で、「そこの層を厚くしたい!」という思いがありました。また、今シーズンのテーマとして一つ掲げているのが、「速攻と遅攻を使い分ける」ということ。速攻の部分では、やはりスピードのある選手が非常に重要になってきます。彼らのスピードを生かして得点に繋げるということも、今年は取り組んでいきたいと思っています。
―選手層が厚くなったことで、メンバー選考やチームマネジメントの部分で難しさもでてくるのではないでしょうか?
昨シーズンと同様ですが、メンバーを固定するつもりはありません。ただ、「ローテーションにこだわる」というよりは、毎試合毎試合、その日のベストメンバーを選ぶことを最優先にしています。連戦など過密日程が基本のリーグなので、本当に総力戦になります。戦う準備ができている選手が多ければ多いほど、いつもフレッシュなメンバーで試合に臨めます。技術的にも精神的にもフィジカル的にも、戦える状態を選手全員がしっかりと準備できる環境を作っていきたいと思っています。
ピッチ外から指示を出す小寺監督
就任4年目で訪れた想いの変化
―就任4年目を迎えますが、ご自身の中でなにか変化したことはありますか?
変わらない部分と変わった部分があります。変わらない部分は「自分たちがボールを握って主導権を握ってゲームを支配していくこと」。それをベースにして積み重ねてきているからこそ、今得点を取るところにフォーカスできていると思います。
―逆に変わった部分はどんなところでしょうか?
「得点を取るために何が必要かを、より突き詰めて考えるようになったこと」ですね。これまでは、主導権を握ってチャンスを多く作り出し、勝つ可能性を高めることまでが監督の仕事だと思っていました。ただ、昨シーズンの経験から、「それでは甘いんじゃないか?」と思うようになって。例えばゴールを最後に決めるのは選手なので、どこか「選手の仕事」という風に考えていたのですが、それではダメだなと。チャンスを作った後の最終局面での「あと1歩、2歩」にどこまで踏み込んでいくかを考えるのも、監督としての自分の役割だと思っています。
―戦術面での大きな変化ですね。
あとは、選手たちもそうですが、自分のメンタルコントロールはしっかりできるようにならなければと思っています。「監督って思っている以上に見られているんだな」と、4年目を迎えて本当に強く感じました。100%の自信なんて持てるわけじゃないんですけど、「堂々としておく」は自分として成長するべき部分なのかなと思っています。完璧を目指すのではなくて、最善を尽くすというか。「勝つために何が必要か」を考えて試合に臨んでいかないといけないなと思っています。
戦況を見つめる小寺監督
―サッカー以外では何か変化はありますか?
今シーズンは、地域貢献活動には率先して参加するようにしています。例えば、先日は地域のお祭りの準備に参加し、テント設営などもやりました。自分が先頭に立って活動することで、選手たちにその重要性を理解してもらえたらと思います。
また、今までは近所の方だったり、子どもを介した繋がりが多かったんですけど、また違った形での繋がりを増やすことで自分を知ってもらって、チームを応援していただくキッカケを作れたら良いなと。応援してもらえる存在になることで、地域の方たちにプラスをもたらせるような、そんな存在になりたいと思っています。
―お祭りの話がありましたが、ちなみに今年の都農祭りには参加されますか?
はい、参加します。神輿も担ぎますよ(笑)。都農祭りってすごい熱気があって、当日はメインストリートが人で溢れます。県外にいる都農町出身者の方たちが都農に帰ってくるので、その日だけ明らかに人口が増えるんですよ(笑)。この街への愛着が強く感じられる祭りで、初めて観た時は圧倒されましたね。
そんな熱い情熱を、都農祭りと同様にヴェロスクロノスにも向けてもらえるように、日々頑張っていきたいです。
―プライベートでの変化などは、なにかありましたか?あればお聞きしたいです。
昨年3人目が生まれて。なかなか大変ですね。ただ、僕が会社に行っている時は、妻が一人で3人を見てくれています。そのおかげで自分は仕事に集中できているので、奥さんには本当に頭が上がらないですね。うちの子は結構寝てくれるので、それも助かっています(笑)。
近所の方たちも、子どもたちを預かってくださったりしてすごく助けてくれて。実家が近くない分、非常に助かっていますし、ありがたい限りですね。
迎える新シーズンへの意気込み
―今シーズンのチームスローガン「超えろ!」についての印象をお聞かせください。
シンプルに自分たちにも、応援してくれる人たちにも響く言葉だと思います。今年こそ目標を達成できるように、超えなければいけない壁をしっかりと超えていきたいと思います。
―今シーズンのライバルクラブはどこだと考えていますか?
FC延岡AGATAさんとジェイリースさんが一番のライバルですね。前者は組織的にボールを動かして、選手のタレントを生かすサッカーに変わってきています。後者は個々の能力が高く、今年はより組織的で穴のないチームを作ってくるんじゃないかと想像しています。監督も2年目で、監督のやりたい理想のカタチに近づいてくるんじゃないかなと思います。
―開幕戦への意気込みをお聞かせください。
開幕戦は集中開催で全チームが宮崎に集まります。しかも地元でできるということで、自然と気合いが入りますね。目標を口にするのは簡単なんですが、それをしっかりとピッチ上で示したいです。周りの人から「ヴェロスクロノスは昇格に値するチームだね」と言ってもらえるようなパフォーマンスと結果を、開幕戦から出していきたいと思っています。
―ずばり、今シーズンの目標を教えてください。
地域チャンピオンズリーグで優勝することが目標です。まずは地域CLの出場権を獲得し、決勝リーグで優勝すること。大きな挑戦になりますし、そのために目の前の試合、目の前の練習に全力で取り組んでいくことですね。
また、先ほども話しましたが、どの試合も「2-0で勝つこと」。昨シーズンは最後の3試合とも2点取れていれば状況は変わっていました。そこを突き詰めて、チーム全体として継続的にやっていきたいと思っています。
―最後に、サポーターに向けて一言お願いします。
昨シーズンの天皇杯の準決勝・決勝や、宮崎での集中開催など、強い相手との試合でもホームで戦っていると感じられるほど、たくさんの声援に力をもらいました。感謝の気持ちがすごく強かった分、目標を達成できなくて申し訳ない気持ちです。
だからこそ、今シーズンに懸ける想いは非常に強いです。「いいサッカーをしている」だけで終わらせず、数字にもフォーカスしてチーム強化に取り組んでいます。開幕戦を楽しみにしていてください。声援も厳しい意見も含めて、チームの近くでどんどん声掛けしていただけたらと思います。
ぜひ、今シーズンも熱い応援を、よろしくお願いします!
〈おまけ〉
―休日の過ごし方を教えてください。
妻と下のこと一緒に、日向にある海が見えるカフェによく行きますね。景色がよいだけじゃなく、小さい子連れでもOKなところなんです。スタッフの方々も子どもをかわいがってくれますし、仕事もできるのでおすすめです。チーズカレーが美味しいです。定食もありますし、食後のコーヒーやデザートも美味しくて……なんでも美味しいですね(笑)。
- 2025.03.12
- 選手・スタッフ