社会人を経験し、ドイツへ渡った異色の経歴
さらなる高みを目指し、信じた道を邁進する
クールな笑みを浮かべ、熱き思いを語るGK吉田裕也選手にインタビューした
サッカーとの出会い
―サッカーを始めたきっかけを教えてください
幼稚園の頃、たまたまテレビでサッカーを見て、「やりたい!」って言ったのがきっかけだった気がします。
正直あんまり覚えてないです(笑) 実際に始めたのは小学校1年の冬でした。
―どんな少年でしたか?
ちっちゃい頃はめっちゃ太ってて(笑)
体が大きすぎて、小学校の身体計測では「病院で再検査」っていう通知書を6年間ずっともらってました。
横も縦もでかいみたいな、本当に体格のいい少年でしたね。
―今の姿からは想像できませんね…!現在のような体型になったのは、いつ頃からですか?
中学校時代ですね。サッカー部のGKコーチにめちゃくちゃしごかれて。
肥満脱出したおかげで、中学校で再検査通知は貰わなくなりましたね。
―GKを始めたのはいつ頃ですか?
サッカーを始めて割とすぐにGKになりました。
きっかけはクラブに入ったばかりの頃にあった試合です。チームがめちゃくちゃ点を取られて、ボロボロにやられたんです。
僕はベンチにいたんですが、監督に「僕がGKなら、もっと失点防げた」って生意気にも進言したんです(笑)
「じゃあやってみろ」って言われて、交代で出場したのが僕のGK人生の始まりでした。
ちなみに交代前のGKより1点だけ失点少なかったんで、そこからレギュラーを勝ち取りましたね。
周りの子たちより頭一つ大きい、小学生時代の吉田選手(後列一番左)
GKとしての成功も挫折も味わった学生時代
―学生時代で特に印象に残っている出来事を教えてください
高校3年の時、ナショナルGKキャンプU-18(全国から10人のGKを招集して育成するプログラム)に選ばれました。
すごい人たちの中で練習させてもらって、いい経験になりましたね。
―ナショナルGKキャンプではどういった練習をするんですか?
いくつかのグループに分かれて、各グループに一人コーチがついて指導するんです。
練習の最後にはゲーム形式のトレーニングをやるんすけど、全員GKなので、とにかくシュートが下手で……。
全然点が入らなくて、すごい空気になりました(笑)
とても楽しかったし、同世代のすごい選手たちと一緒にやれて色々刺激受けたっすね。
―大学でのサッカーはどうでしたか?
関東学院大学に入学したんですが、学校が横浜・F・マリノス(以下、マリノス)と提携していて。
プロ選手を間近で見られたり、プロの練習に参加できたり、めちゃくちゃ良い環境でした。
ただ僕個人としては、全然何もできない4年間でした。
試合にも絡めていないし、GKなのでミスしたときは特にボロクソに言われてしまって、メンタルが折れました。
「俺はもうサッカー無理だ」と挫折して、卒業後は就職することにしたんです。
会社員を経験して、サッカーへの思いを再確認
―大学卒業後は、どんなお仕事をしていたんですか?
東京都内の不動産会社で営業をやってました。テレアポ、テレアポの毎日です。
「お客さん捕まえらんないな~」となったら1日中歩き回って、飛び込みで営業に行ってたっすね。
―体力的にもメンタル的にもすごく大変そうですね
めちゃくちゃな暴言吐かれることも結構ありました。まあ何回も電話したり、急にピンポンするこっちが悪いんですけどね。
でも意外と、慣れちゃえば作業感覚になっていくんすよ。
段々と知らない人の家にピンポンすることも、なんとも思わなくなったっすね(笑)
とりあえず声かけないと仕事に繋がらないので、その時はがむしゃらにやってました。
―もう一度サッカーを始めようと思ったきっかけは?
仕事の都合上、平日休みだったんですが、休日に遊べる友達がいなくて、暇を持て余していました。
大学の部活を引退したときに練習着なども全部捨てて、「サッカーやめる」って決めたはずなんですけど、でも段々と「サッカーしたい!」って気持ちが大きくなりました。
ボール蹴りたくなってくるんすよね。
それで社会人1年目の夏ぐらいに、東京都リーグのチームに入れてもらいました。
でも「どうせやるなら、ちゃんとやりてえな」って思い始めちゃって、冬には「ドイツでサッカーしよう」と決意して仕事を1年で辞めました。
憧れの地・ドイツで学んだGKのマインド
―行先はなぜドイツだったのでしょう
ドイツって世界有数のGK大国で、学生時代から憧れがあったんですよ。
またサッカーやるって決めたとき「普通の道じゃない方がいいな」って思って。
仕事を辞めて失うものがなにもなかったんで、行先はドイツ一択でしたね。
―ドイツで一番衝撃を受けたことはなんですか?
ドイツのGKは、練習の時と試合の時で雰囲気がガラッと変わるんです。スイッチの入れ方が上手いっていうか……。
なんか、めちゃくちゃ勝負強いんですよ。あと、自分がミスしても、当然のように他人のせいにします(笑)
「おいお前ちゃんとやれよ!」みたいな(笑)そのぐらいの鋼メンタルでやらなくちゃゴールは守れないんだなって実感しました。
試合後、ドイツのチームメートとともに写真を撮る金髪姿の吉田選手(右から3人目)
―ドイツでは何年くらいプレーしたんですか?
大体1年くらいドイツにいました。
本当はずっとドイツでプレーしたかったんですけど、コロナの影響でドイツにいるのが厳しくなってしまって。
不本意ながら帰国することにしたんです。
―そうだったんですね、帰国後はどうされたんですか?
「コロナが落ち着いたら、またドイツに行くぞ!」と思いつつ、ひとまず日本でサッカーできる場所を探しました。
当時あてもなかったので、自分で色々なチームに連絡しましたが、なかなか見つからず……。
諦めかけていた時に「練習に参加してみませんか?」と連絡をくれたチームが一つだけあって、それがガンジュ岩手だったんです。
―まさに渡りに船ですね。東北地方は初めてですか?
初雪国で大変なこともありましたが、貴重な体験を色々させてもらったっすね。サッカーをしながら、高校のGKコーチの仕事もさせてもらったんです。
帰国当初は1年くらいでドイツに戻るつもりだったんですが、教えていた子たちの成長が目覚ましくて。
十数年ぶりに全国大会出場を果たしたりして、卒業まで見届けたくなったんです。
結局、気づいたら3年間岩手にいましたね(笑)
高校のGKコーチをしていた吉田選手(後列右から2人目)
小学校サッカー教室のコーチをしていたことも
もう一度、サッカーで上を目指す決意
―その後ドイツには戻らず、ヴェロスに加入されますが、決め手は何だったんでしょう?
高校で子どもたちの成長を見ていたら、「自分も上を目指したい」って気持ちが強くなったんです。
年齢的にも「今しかない!」と思い立って、全国のGKを対象にしたセレクションに参加しました。
そのときに強化部の根本さんと、監督の小寺さんに声をかけてもったんです。
ヴェロスの選手はすごい人ばっかりだし、JFL昇格を目指しているチームなので、「ヴェロスでなら上を目指せる!」「ここで頑張りたい!」と思いオファーを受けました。
―実際ヴェロスに入って、選手のレベルの高さは感じますか?
めっちゃ感じます。
「Jリーグでもやっていけるのでは?」みたいなレベルの選手もいて、正直驚いています。
そういう選手がいるからこそ練習のレベルも高くて、すごくいい環境です。
真剣な表情で練習する吉田選手
―吉田選手のプレーの強みを教えてください
身長を生かした空中戦とハイボールへの対応です。この2つはずっと自分の持ち味としてやってきたことなので、これからも精度を上げてより確実な技術にしていきたいです。
―今、新しく磨いている技術があれば教えてください
足元の技術と、GKとしての判断力の向上を意識した練習をしています。
ヴェロスはボールを後ろから繋いでいくプレースタイルが主流なので、そういった能力を求められる場面が多いんです。
チームメンバーに声をかける吉田選手
―憧れの選手はいますか?
六反勇治選手です!僕が大学生の時に横浜・F・マリノスに在籍されていて、直接お会いしたことがあるんです。
―どういうきっかけでお会いしたのですか?
先ほどお話しした通り、母校がマリノスと提携していて、練習に参加させてもらえることが度々ありました。
練習に参加すると、マリノス専用の食堂で選手と同じご飯を食べさせてもらえるんです。
練習に参加した後、一人で食堂にいたら、六反選手が隣に来て一緒にご飯を食べてくれたんですよ。
お話ししてみると、本当に人として尊敬できる素敵な人だなって思いました。
元々すごい選手だと思っていたんですけど、その日からめっっっちゃ好きになりました。
―すごい!素敵な思い出ですね!
たぶん六反選手はそのこと覚えてないと思いますけど、 僕の中でずっと大切にしている思い出ですし、その日からずっと大きな存在なんです。
いつかお互いに選手として六反選手と同じピッチに立って試合をするのが夢です。
―GKとしての六反選手のすごさを教えてください
六反選手は安定感が素晴らしいGKだなと思ってます。
GKは、「この間の試合は100点だったけど、今日の試合は50点の出来だった」みたいなムラがあると良くないんです。
そういう意味で、六反選手はどんな試合でも80点以上を出し続けるんですよ。
スーパーセーブは少なく見えるんですが、それは高いレベルでプレーが安定しているからこそ。
目立ちづらいんですけど、僕自身もそういう選手を目指しています。
宮崎に来て始まった新しい生活
―シフトプラスではどんなお仕事をされてるんですか?
ふるさと納税に携わる仕事をやってます。
ページ作成とか、電話対応とか、事業者さんにご挨拶に伺ったりとか。
なんでも屋みたいな感じっすね(笑)
―幅広い業務をされているんですね
幅広いですけど、結構楽しくやっています!周りの人たちがみんな優しく教えてくれるので。
―宮崎に移住されて半年ほどになりますが、お気に入りのお店とかできましたか?
最近、彼女と一緒に色々なお店に行ってるんですけど、『嶋うた』っていう高鍋にあるお店がおすすめっす!
鳥刺しとか、鳥レバ刺しとか宮崎っぽい料理が食べられます。めっちゃうまかったです!
―ちなみに吉田選手は、鳥刺しを食べて体調は崩されなかったですか?
僕は大丈夫でした!鳥刺し大好きです。
ヴェロスにも鳥刺しにやられて練習休む選手いましたよ!今年入って2人ぐらい、お腹壊した人を知っています(笑)
都農で成し遂げたいこと
―個人として達成したい目標はありますか?
上を目指して岩手から宮崎まで来たので、JFL昇格に貢献したいっていうのが1番です。
今はサブメンバーなので、とにかく試合に出てチームの力になれるように頑張ります。
―最後にサポーターの皆さんに向けてメッセージをお願いします
今年無敗でリーグ勝ち続けられているのも、皆さんのサポートあってのことだと思います。
このまま突き進んで九州リーグ優勝するためにも、皆さんの力が必要です。
ぜひこれからも応援よろしくお願いします。そして一緒にJFL昇格しましょう!
吉田 裕也 選手の詳細プロフィールはこちら
- 2024.08.08
- 選手・スタッフ