《選手&スタッフインタビュー #46 》五領淳樹選手インタビュー | トピックス

穏やかな笑顔の奥に熱い想いを滾らせ

プレーで言葉でチームを頂きへと導く

選手として14年目を迎えるヴェロスの新「No.14」五領淳樹選手にインタビューした

サッカーとの出会い

―サッカーをはじめたきっかけを教えてください。

お兄ちゃんが幼稚園でサッカーをやっていたので、生まれた時にはもうサッカーがそばにある環境でした。お父さんがよくお兄ちゃんの試合に連れていってくれて、試合をしてる横でボールを触らせるみたいな感じだったみたいです。僕自身、全く記憶はないんですけど（笑）

ちゃんとチームに所属したのは幼稚園の年中の頃で、幼稚園サッカーに力を入れていたカトレア幼稚園っていうところに入ってやっていました。

―幼い頃からチームに入られていたんですね。小学生からスポーツ少年団ですか？

アミーゴス鹿児島というチームに入っていて、中学2年の夏まで所属していました。アミーゴスは技術を大切にするチームだったので好きだったんですけど、なかなか試合に出られなくて辞めちゃって。その後、中学卒業までは部活動でサッカーをやってましたね。

―ポジションとしては、元々サイドだったんですか？

サイドをやるようになったのは高校からです。それまではずっと中盤で、中でもトップ下とか前の選手でしたね。真ん中にいるイメージです。

「打倒鹿実」に挑んだ神村学園時代

―高校は神村学園に進まれますね。進学を決めた理由はなんだったのでしょうか？

2個上の代の鹿児島実業高校(以降、鹿実)が最強だったんですが、僕は「強い鹿実を倒したい」って思いが強かったんです。当時、鹿児島県のトレセンに選ばれていたんですが、参加してたメンバーで「神村に行って鹿実を倒そう」って話になって。だから、学校で選んだというよりは、同級生で選びましたね。結果、正解でした。

―“正解”ということは、鹿実に勝てたということですか？

新人戦のインターハイでは、鹿実に勝って優勝しました！でも、高校最後の大会（全国高校サッカー選手権大会鹿児島県大会）では、決勝でPK戦の末負けてしまって。鹿実よりも僕らの方が圧倒的に評価が高かったんですが、その時の鹿実は今まで対戦してきた中で一番強かったですね。「『気持ちが入ってる』っていうのは、こういうことなんだろうな」と実感した試合でした。

神村学園時代。コーナーキックを蹴る五領選手

自分と向き合った大学時代

―大学は宮崎産業経営大学に進まれますね。サッカー部はどんなチームだったんですか？

どちらかというと繋ぐタイプのサッカーだったので、僕としてはすごく面白かったです。全国大会に1回も出られなかったのは悔しかったですけど。

―チームメイトもプロを目指す選手は多かったんですか？

いえ、多くはないです。例えば福岡大学や鹿屋体育大学といった強い大学は、プロになりたい選手が11人集まってるようなチームですけど、産経はそういうチームじゃなかったですね。

―そうなると、チームメイトとの意識のギャップはあったんじゃないですか？

んー、あったとは思いますけど、僕自身そこまで周りに「もっとこうしろよ！」って求めるタイプじゃないので。「ギャップに苦しむ」みたいなのはなかったですね。自分がやることをやっていれば、おのずと……って思ってたので。確かに勝てなかったら悔しいんですけど、別にそれを「あいつがやってないからだ」っていう考えにはならなかったですね。Jの練習参加に行くときは結局1人ですし、結果としてプロになれたので。産経に行ったのは間違ってなかったと思いますね。

遂に掴んだプロの道。1年目で磨かれた「前への意識」

―大学卒業後、ロアッソ熊本に入団されますが、きっかけを教えてください。

大学4年生の時に、九州内のJクラブの練習に参加させてもらって。オファーをいただいたロアッソ熊本に入団しましたね。

―プロ1年目のシーズンはいかがでしたか？

僕が入った当時の監督が、「アジアの大砲」と呼ばれていた高木琢也さんだったんですが、結構試合で使っていただいたんです。途中怪我をして出られない時期もありましたが、基本的にはメンバーに入れてもらえたので、充実したシーズンでしたね。高木さんには感謝しています。

―高木監督が目指すサッカーの特徴を教えてください。

「とにかく前にいけ！」って感じでしたね。あまりバックパスを好まないというか。前線の選手には「ターンして前にいけ！」みたいな感じでした。経験豊富なベテランの選手がいっぱいいたんですが、皆さん「誰もお前がうまいプレーできるなんて思ってねぇからガンガンいけ！」って言ってくれて。変なプレッシャーもなく、むしろ楽しんでチャレンジできました。おかげで、「前への意識」は１年目で相当鍛えられましたね。

―充実の1年目を過ごされて、ロアッソにはその後2シーズン在籍されましたね。

１年目はすごく良かったんですが、2、3年目は怪我が多くて、なかなか試合に絡めなかったんです。あと、若い時は寝坊癖とかもすごかったりして。プレー以外のところでチャンスを逃していたことも多々あって、全体的にあまり良くない時期でしたね。

―どのように改善されていったのでしょうか？

北嶋秀朗さん（元日本代表、現クリアソン新宿監督）の言葉のおかげで、腐り切らずに済みました。僕が熊本にいた時にコーチをされていて、かなりお世話になっていました。結構なんでも相談していたんですが、「これだけ頑張っても結果として表れないのがつらい」みたいな話をした時に、「お前、最近人に矢印が向いてるな」って言われて。

―見抜かれていたわけですね。

「同じポジションの選手の活躍を喜べるようになった時、お前は強くなれるよ」って言われたんですよ。その時は正直「なに言ってんだ？」って思いましたけど、年を重ねるにつれてその言葉がスッと入ってくるようになって。要はベクトルを常に自分に向けていかないと、成長はないよって話で。元々自分に向けるタイプではあるんですけど、その大切さをちゃんと理解できたんです。当の本人は「そんなこと言った覚えない」って言ってましたけど、僕の心にはずっと刺さってますね。

ヴェロスクロノス都農でプレーする五領選手

地元での再出発。課題と向き合い勝ち取った信頼

―ロアッソ熊本退団後、当時JFLの鹿児島ユナイテッドFCに入団されますね。

熊本3年目で退団することになって、初めてトライアウトを受けました。ただ、そのタイミングで腰を痛めてしまって。思うようなプレーができず、結局自分の行きたかった場所には行けなかったんですが、最後に鹿児島からオファーをもらえて。なんとか選手を続けられることになりました。ただ、当時はまさか自分が地元のチームに入るなんて想像もしてなかったですね。ＪＦＬというカテゴリーでプレーするのは、まだ先の未来だと勝手に思っていたので。

―Jリーグ昇格を目指すチームならではの難しさなどはありましたか？

僕が入団する前のシーズンを３位で終えていたのもあって、チームの空気としては楽観的でしたね。今と違ってチーム同士のレベルにも差があったので、苦労したって感じでもなかったです。ただ、個人的には結構苦労しましたね。

―どういった苦労があったんですか？

１年目は途中出場が多くて、その悔しさはめちゃくちゃありましたね。監督からは「守備ができないから、試合の最初から使えない」ってずっと言われていて、「サブとして流れを変える選手」っていうポジションを崩せなかったんです。そこから抜け出すために、守備がうまい選手のプレーを参考にしたり、立ち位置やチームとしての守り方など、守備を徹底的に学びましたね。

―攻撃の選手としては、苦しい時間だったんじゃないですか？

その時はめちゃくちゃむかついてましたね（笑）「攻撃で違いを出せればいいだろうが」って思ってました（笑）でも、今思えば、守備を学べたあの時間があったからこそ、鹿児島で10シーズンもプレーすることができましたし、今も現役を続けられているんだと思います。

―自らの課題に真摯に向き合ったからこそ、今の五領選手があるんですね。

守備の話をされた時、「監督が求めるものを表現できる選手が試合で使われる」って気づいて。「どうアジャストしていくか」を、より考えるようになりましたね。僕は選手として14年目なんですが、すでに12人の監督と仕事をしてきてるんですよ。監督が変わるたびに当然戦術もガラッと変わるので、その都度自分に求められていることを理解して、適応する力が身についていったと思います。12人は多すぎますけどね（笑）

「昇格」への熱い思いを胸に新天地・都農へ

天皇杯の名古屋グランパス戦(2025/6/11)ではキャプテンマークを付け、攻守にわたりチームを牽引した

―今シーズンからヴェロスへ入団されましたが、ヴェロスの存在は元々ご存じだったんですか？

もちろん！谷口堅三くんや知ってる選手も所属してましたし、練習試合で対戦もしていたので。どういうサッカーをするのかも、ある程度分かっていました。「繋ぐことを大事にしてる」っていう話も聞いてましたし、実際に見て「いいチームだな」っていうのが率直な感想ですね。

―ヴェロス入団の経緯をお聞かせください

鹿児島を退団した時、代理人を付けていなかったので自分で次を探さないといけない状況でした。いろいろ連絡してみましたが、なかなか決まらなくて。本当に引退を決意する手前までいってたんですけど、根本さんから声をかけていただいてなんとか。辞めたい気持ちは全然なかったので、すぐ「お願いします！」って感じでしたね。

―ご家族にも相談されたのでしょうか？

もちろん家族にも相談しました。奥さんからは「好きなことをやれるのは今だけなんだから」と背中を押してもらったので、加入を決めましたね。実際今も家族とは離れていますが、単身で都農に行くという選択を理解してもらって、好きな事を続けさせてもらえてるので、家族には本当に感謝しかないです。

―初めて都農町に来られた時の印象はいかがでしたか？

すごく自然に囲まれていて、時間がゆっくり流れているなって感じましたね。過ごしやすくて良い場所だなって思います。

―チームから求めている役割について、なにか言及はありましたか？

根本さんからお話しをもらった時は、「地域CLなどの大会を戦う上で、時間を使ったりチームを落ち着かせられる選手がいない。そういう役割を担ってほしい」と言われました。僕自身、昔みたいにガンガンいくのではなく、チームの状況を見ながら判断してプレーできるようになったので、小寺監督にもそこを評価していただいたのかなと思います。

―チーム内でもベテランという立場になるかと思います。チームメイトへの声がけなどで意識されていることはありますか？

僕自身これまでいろいろな経験をしてきた中で、伝えられることはどんどん伝えていきたいと思っています。北嶋さんの話もそうですけど、僕もいろいろな先輩に言葉をかけてもらったおかげで、マインドの変え方を学んできました。天皇杯の宮崎予選決勝の時に出場機会のなかった陽明（味元陽明選手）にベンチ裏で声をかけたのも、彼にとって、なにかのきっかけになればと思っての行動でしたね。

チームメイトのゴールを祝福する五領選手（写真右）

―経験豊富な五領選手だからこそ言葉に重みがありますし、監督もそんな姿を求めているのではないでしょうか。

そうですね。今後も取り組んでいきたいと思っています。でも監督のすごいところは、もう36歳になる僕に「背後にどんどん抜けてほしい」っていうことも求めるんですよ（笑）「サイドをやる人間であれば、必ずそれはやってほしい」と。最初はそこのプレー面に対する葛藤はありましたね。「そういうタイプじゃないんだけど」と思いながら（笑）でも、求められていることもよく分かるので、タイミングを見ながら背後を狙う動きもやりつつも、他の選手とは違う部分を出していけたらと思っています。難しいですけど、楽しんでやってますね。

―実際にプレーを見て、注目している選手はいますか？

Jリーグのチームと比較しても遜色ないレベルのメンバーが揃っていると思いますね。個人でいえば、松本幹太選手は上のカテゴリーでも充分やれると思います。あとは藤本奎詩選手は結構好きな選手ですね。面白いものを持ってるなと思いますし、レンタル元で出れないのが不思議なくらい。繋ぐスタイルのチームなら、全然Jでも活躍できる選手だと思いますよ。

―ご自身のストロングポイントや、試合で注目してほしいプレーを教えてください。

左足のキックですね。あとは、試合の流れを見ながら、ボールを落ち着かせるところに注目していただきたいです。

―ヴェロスで背番号14を選ばれたのは、なにか理由があったんですか？

単純に一番好きな番号なんです。鹿児島時代の11番も、地元の先輩が退団する時に託された番号だったので、もちろん思い入れはありましたけど、元々7の倍数が好きで。小・中学校時代は7番、高校で初めて14番を着けて、それ以来ずっと好きなんですよ。ヴェロスに加入する時にちょうど空き番だったので、迷わず選ばせていただきました。

試合前に円陣を組み、気持ちをひとつに（写真中央14番が五領選手）

支えてくれる人たちへの感謝を胸に

―試合では、たくさんの鹿児島時代のサポーターの方が都農町まで応援に来てくださっていますよね。愛されていたのが伝わります。

本当に嬉しいです！嬉しいって言葉では足りないぐらい嬉しいですね。鹿児島にいる時はチームを観に来てもらうのが当たり前の環境でしたけど、ヴェロスに入ったことで、よりダイレクトに「こんなに自分を応援してくれてるんだ」と実感できて。すごくありがたいですね。たくさんの人に支えられているからこそプレーができているので、しっかりと結果で恩返ししていきたいと強く思います。

―ちなみに休日（オフ）はどのように過ごされていますか？

単身で都農に来ているので、オフの日は鹿児島の実家に帰っていますね。奥さんや子どもたちと一緒に過ごす時間を大切にしています。

休日は家族と一緒に過ごす時間を大切にしている五領選手

―練習後は、サッカースクールのコーチをされてると聞きました。

水・木・金の週3日やってますね。僕は教えるっていうよりも、一緒にプレーするタイプのスクールコーチなので、まずはサッカーの楽しさを伝えられたらと思ってます。「サッカー＝楽しい」は、自分もずっと変わらずに持ってるので、教える側になっても忘れないようにしています。発見だったのは、子どもたちに説明する時って結構頭を使うんです。でも言語化していくうちに、段々自分の考えが整理されていって、解像度があがっていく感覚があって。そういう意味では、選手は全員コーチやった方がいいなって思います。

スクール生との集合写真。佐土原・都農でサッカーの楽しさを伝えている

―まだ先の話ですが、指導者への興味はありますか？

スクールに関わり始めて、教えることの魅力を感じているので、少しずつ興味は湧いています。ただ、今はまだプレーすることが一番好きなことなので、やれるうちは突き詰めてやろうって思いますね。40歳くらいまではやれる自信がありますよ（笑）でも、なにが起こるかは分からないので、とりあえず1年1年を楽しみながら頑張りたいです。

―今シーズンの目標をチームと個人それぞれ教えてください。

チームとしての目標は、絶対JFL昇格！これ以外ないかなと思っています。

個人としてはやはり、ピッチ内外でチームに貢献することですね。ヴェロスに入ろうと思った最大の決め手が、「自分が昇格させたい」って気持ちが強かったことです。僕は鹿児島でJ2昇格を味わった人間なので、肌で感じてきた「昇格するチームに必要なこと」を伝えて、チーム全体の雰囲気を変えるきっかけになれたらと思ってます。

―最後に、サポーターの皆さんへのメッセージをお願いします！

ホーム戦はもちろん、アウェイ戦でもいつもの応援が聞こえるのは、選手にとって本当に心強いものです。選手全員が皆さんのサポートを感じています。昇格した時に、町全体がより熱く盛り上がれるように僕らも頑張りますので、最後まで後押ししていただけたらありがたいです！よろしくお願いします！

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