都農の農業を支えるサッカーを通した町おこし
プロサッカーチーム「ヴェロスクロノス都農」選手の魅力に迫る。
都農町に拠点を置く、プロサッカーチーム「ヴェロスクロノス都農」。 その大黒柱として仲間を支える、MF大竹隆人選手はチームのリーダー的存在だ。 地域起こし協力隊・農業班のリーダーでもある彼は、 農家さんからの信頼も厚い。チームメイトと町の人々、 どちらからも頼られる大竹選手にインタビューし、その魅力に迫る。
プロサッカー選手への道
ーサッカーを始めたきっかけは?
正直言うと明確には覚えてないんですけど、 小学校の時に、仲良かった友達がサッカーをやっていたのがきっかけですね。そこからは自然に地元のサッカークラブに入って、 ただただサッカーが楽しくてずっとやっていた感じでした。 余計なことを考える暇もないくらい、 サッカーに前のめりで本当に楽しくて仕方がなかったんですよね。
ープロサッカー選手になったきっかけは?
高校生になって「プロになる」という具体的な目標を持つようになったんですが、大学に入るとプロへの道がより現実的になってきたんですよね。 自分の中では、先輩達の背中を見れたのが大きかったんだと思います。と言うのも、大学に入るとプロになる先輩が沢山いたんです。 プロになるための厳しい練習はもちろんそうですけど、 そういう環境に身を投じる中で、 自分も活躍すればプロになれるんだろうなって実感を持ちました。
ヴェロスクロノス都農にて活躍する大竹隆人選手(左)
都農町との出会い
ーヴェロスクロノス都農に入ったきっかけは?
ヴェロスクロノス都農が、まだ「J.FC MIYAZAKI」というチームだった時に、 当時の社長さんから声を掛けてもらったのがきっかけでした。 チームの拠点を、宮崎市から都農町へ移すタイミングで、 サッカーをやりつつ、都農町を盛り上げたいという話があり 一緒に来てくれないかって言われて。 単純にサッカーを続けられることと、 地域おこし協力隊という制度に興味があったのでヴェロスクロノス都農に入る決意をしました。
ー新たな環境での難しさなどはなかったですか?
都農町という場所で、新しいスタートを切ったんですが、 チームとしてもまだ1年目で、町の人からしてもサッカーチームが来るなんて驚いただろうし、 そもそも知ってる人も全然いなかったから、そこは大変でしたね。 1年目はコロナの直撃もあって、 そもそも都農町の人と接する機会が少なかったのもあったのかも。 地域おこし協力隊の活動の甲斐もあって、 徐々に色々な人に認知され始め、知名度が変わって行くのを肌で感じましたね。
最近だと、町の人に声をかけられることもあるし、 チームのことを知らなかったとしても、「サッカーの」って言ったら、「あのサッカーの子たちね」と、なんとなくは知ってくれていて、そこから応援してくれる場面も増えました。 僕らのことを応援してくれるお店とかも出てきて、 ヴェロスクロノス都農の、旗を置かせて欲しいって言ってくれるところもありましたね。 本当にいろんな人の力で、チームも大きくなっていったんだと思います。
ヴェロスクロノス都農を応援するのぼり
農業とサッカー
ー地域おこし協力隊はどんな仕事をされているんですか?
僕は都農に来た時から農業班として、主に農家さんのお手伝いをしています。 人手不足の農家さんだったり、跡継ぎが居ない高齢な農家さんだったり、 困ってる人たちのところに行って、いろんな作業をしてますね。 農業って力仕事も多いんですよ。 やっぱり高齢の農家さんだと、重い荷物を持つのとかって大変じゃないですか。 そこはまだ若い僕らが助けに行って、少しでも負担を減らしてあげたいんです。 「本当に助かった、ありがとう」って直接言ってもらえることが嬉しいですし、 僕らも手伝いをさせてもらったら「今度、試合見に行くね」って言ってくれて。 実際にスタジアムに来てくれる農家さんも多いんですよ。 この活動自体やりがいもあるし、お互いにとってすごくいい関係だなと思います。
地域おこし協力隊として作業する大竹選手(写真左)
ー実際にどんな生活を送られてますか?
午前中は練習やトレーニングをして、 午後からは地域おこし協力隊として仕事をする生活を送ってます。 サッカーやって農業やってのバランスで。 このインタビューが終わった後も、トマト農園に作業しに行くんですけど、 ハードな練習をした後に農家さんの所に行って、夕方まで作業をするのが毎日のルーティンになっています。
ー農業をやってみてどうですか?
全く農業の知識がない状態で始めたんで、 やり方とかアドバイスをもらいながらやっているんですけど、やればやるほど大変ですね。 これは農家さんがよく言うんですが、 「自分がやった分だけ、情熱を注いだだけ返ってくる」って。 最初は、これを聞いて面白いぐらいに思っていたんですが、 実際に自分が農業に携わることで、言葉の意味を実感しました。 野菜が育って収穫した時の感動はすごいですよ。
ーきつかった仕事はありましたか?
練習が無ければそんなにきつくは無いんですけど、 トレーニングの後からの作業なので、仕事内容によってはめちゃくちゃきついですね。 1番きつかったのは、水路掃除をした時。 山奥に車を停めて、さらに15分ぐらい歩いた場所にあるんですけど、 そこの水路が泥水で詰まっていたので、泥水を除去するという内容でした。水路を見みると、泥水が膝下くらいの深さがあるんですよ。 その詰まってる泥水を、シャベルでひたすら外に掻き出す。 3kmくらいの距離を2日掛けてやったんですが、 あれはちょっとやりたくないです。(笑)
ー都農での衝撃的なエピソードはありますか?
うーん、どうですかね。 もう都農に馴染みすぎちゃって、あんまり分かんないかもしれない(笑) まだ僕が都農に来たばかりの頃、これからお世話になる大家さんとか周りの人に 「なんでも貰えるから、野菜とかは買わなくていいよ」って言われたんですけど、 その当時は僕も、家族も、 何を言ってるのか全く理解できなかったんですよね(笑) 都農で生活するようになって、 地域おこし協力隊としていろんな農家さんの手伝いに行くと、 最後にお土産として、トマトとかブドウとかを沢山貰うんですよ。 この時に初めて、大家さん達が言ってた意味が分かりました。
今でも2、3日に一回くらいの頻度で、 町の人が家に野菜とかいろいろ持ってきてくれる事があるんですけど、 自分たちだけだと食べきれないので、近所の人に持って行こうとしても 「うちも昨日貰ったから大丈夫」って言われるんです。 流石に貰いすぎても食べきれない量だと困っちゃうんで、 僕も段々と断るようになってきて。 最近ではそれが当たり前になってきているのは冷静に考えると驚きですよね。 でも、そういうのって東京じゃ考えられない。 なかなかできない経験、というか関係性なんですよね。
インタビューに答える大竹隆人選手
ヴェロスクロノス都農の未来
ー若手選手について
チーム内は若い選手が多いんですけど、割とみんな大人しいんです。 たぶん僕とか上の世代の方がうるさいんじゃないですかね。 僕はもう家族が居て、町の人とも仲良くしてもらってるけど、 若くて一人だと、都農は遊ぶところが少ないですし孤独も感じやすいはず。 よく町の人にバーベキューとかで呼んでもらえたりするので、 そこに若い選手とかも呼んで、町の皆さんに若い選手やチームが応援してもらえるようにしています。
ーこれからどうなっていきたいか
まずはサッカー選手として・チームとして活躍し、 ヴェロスクロノス都農がもっと大きいクラブになるように力を出していきたいです。 地域おこし協力隊としての活動にも力を入れて、 サッカーを通じて町の人とクラブの関係性を、もっと良くしていけるように努力したいと思っています。
ー都農町の皆さんに一言
これからの時期、バーベキューが増えると思うので都農の方はぜひ僕を呼んでください!
大竹隆人選手の詳細プロフィール・SNSアカウント情報
- 2023.06.28
- 選手・スタッフ