国内外の経験を糧に、チームを導く今季のキャプテン。
安定したセービングでゴールを守る。
GK伊藤剛選手へインタビューした。
サッカーとの出会い
ーサッカーを始めたきっかけを教えてください。
小学校二年生くらいの時に友達がやってたからですね。そこからサッカーにどんどんはまっていって、気がついたら今までやってました。小学校時代は純粋に楽しんでましたけど、中学生になると練習がハードだったので「サッカーが」というよりは練習がキツかったですね。それでも楽しいって気持ちが根本にはあったし、練習自体は好きだったから、今までやってこれたんだと思います。
ー学生時代で印象に残ってることはありますか?
高校生の時にイタリアに招待されて、サッカーの国際大会に出られたことですね。そこで、ACミランの下部組織と試合をしたんですよ。その時初めて海外の選手を体感して、同じ高校生で「こんな選手がいるんだ」ってかなり衝撃を受けました。
日本の高校生って、高校サッカー選手権での優勝を目標にしているのが一般的ですけど、イタリアだと、高校生の時点で「プロとしてサッカーで食っていくこと」を目標にしてるんです。サッカーに対する向き合い方だったり、一つ一つの意識だったり、日本とはレベルが全然違ったんですよね。
自分たちは、「イタリアでサッカーできる!ミラノのチームと対戦できる!」って純粋に楽しみに行ってたけど、あっちは大会でもスカウトにひっかかるように、全く違う思いで戦っていた感じがしました。この海外の選手を肌で感じられた経験は、自分のサッカー人生に影響を与えましたね。
ープロサッカー選手になったきっかけを教えてください。
大学に入ってからもプロになりたい気持ちはあったんですけど、中々サッカーに集中できない日々が続いていたんです。現実的に「プロは無理かな」って思うこともあったんですが、それでもやっぱりプロへの道を諦めきれなくて。そこから「自分の環境を変えるしかない」と思って海外に飛んで「サッカーで生活していく覚悟」を決められたのが、一番のきっかけですね。
インタビューに答える伊藤選手
海外でのサッカー
ー海外へ行くことに抵抗はなかったんですか?
覚悟を決めてからは何も考えてなくて、勢いでそのまま行った感じでした。そしたら、いい感じにチームも決まって「あれ?上手くいっちゃった」みたいな(笑)海外へ行くことに抵抗は無かったんですけど、あっちの生活に慣れるのには苦労しましたね。
言葉は通じないし、最初の一年半くらいは結構しんどかった。そこから徐々に慣れてきて、現地の人とも喋れるようになってからは楽しかったですね。日本と違ってサッカーしかやることないから、サッカーと真摯に向き合えましたのもいい経験でした。
ー選手とのコミュニケーションはどうしてましたか?
言葉は分からなくても、気合いで話しかけに行ってました(笑)自分から喋らないと喋れるようにはならないんで、言葉が分からなくてもコミュニケーションを取るようにしてたんですよ。最初の方は、日本人同士でルームシェアしてたんですけど、慣れてきた頃には、普通にチームメイトのブラジル人と住んでましたね。お互いにそこの国の言葉で喋ってたし、仲良かったです。
ー海外の選手との衝突はありましたか?
日本は上下関係だったり、思ってることがあっても言いにくかったりするから、衝突は少ないですけど、あっちだとサッカーでの喧嘩は普通なんですよ。自分は、何か言われても言葉が分からないふりしてましたね。「何言ってんだよ」みたいな(笑)言葉が通じないこともあって、自分とサッカーにとことん向き合えたし、自分には結構海外の環境が合ってたんだと思います。
ー日本に帰ってきてからの方が大変だったんじゃないですか?
言葉が理解できる分、人間関係でのストレスは抱えましたね。日本だと求められていることが分かる分、遠慮しちゃうじゃないけど、「空気を読まないといけない」のが日本の文化じゃないですか。海外だと何言ってるか分からないから、自分の思うようにプレーできてたので、そこの違いに結構戸惑いましたね。海外でプレーする苦悩もあるけど、日本には別の難しさがあって、慣れるのは大変だったけどその違いも面白かったです。
ヴェロスクロノス都農で活躍する伊藤選手
都農町との出会い
ーヴェロスクロノス都農に入ったきっかけを教えてください。
東京ユナイテッドFCを辞めた後、所属するチームがなかなか決まらず「サッカーやめようかな」と本気で悩んでいたんです。その時に、ヴェロスクロノス都農のフロントに居た方から、声を掛けて頂いたので即決しました。
ー都農に来てみてどうでしたか?
今まで所属していたチームだとあまり感じなかったんですけど、皆さんほんとうに面倒見がいいですね。「なんでそこまでやってくれるの?」ってくらい(笑)町の人が仲良くしてくれて、バーベキューとか食事に誘ってくれることも多いですし、野菜とか果物をもらったり、都農町の人の温かさをすごく感じてます。
ここまで選手と町民の距離感が近いクラブは、初めてだったので衝撃的でした。自分達を応援してくれる声が直接聞けるのも嬉しかったですね。そういう意味では海外に似たものを感じてます。あっちも結構フレンドリーで気さくに声を掛けてくれるので、そういった部分もあって自分は都農が好きなのかも。海外だとやじも飛んで来るけど、都農の皆さんは本当に優しいからそれもないですしね(笑)
ー仕事はどういったことをされてるんですか?
中学生や高校生の、ゴールキーパーコーチをやっています。もともと指導者に興味があって自分のやりたいことだったので、日々やりがいを感じています。子供に教えてる分、普段の自分の練習で意識してやることにもなるし、本当に学ぶ事が多いんです。子どもから気づかされる事も多くて、ウィンウィンの関係で楽しくやってます。
子ども達の質問に答える伊藤選手(写真右)
チームの関係性
ーキャプテンになって心境の変化はありますか?
今年からキャプテンをさせてもらってるんですが、去年だったらあまり気にしないでやっていたことも、一つ一つ意識するようになりましたね。一つの発言や自分の振る舞いが、チームに影響を与えるし見本になると思うから、何かアクションを起こす前に一旦考えて、一歩引いた目線を持って行動するようにしています。
ーチームの雰囲気はどうですか?
他のチームと比べても雰囲気は結構いいと思いますよ。ほぼ全員が都農に住んでいて、練習だけじゃなくて練習後も仕事で一緒だし、多分家族よりも一緒に居るんじゃないかってぐらい(笑)普通のチームだったら練習したら解散して家に帰るけど、うちは基本的に朝から夕方まで一緒なので、単純に一緒に過ごす時間が長いし、他のチームとはまた違った関係性だと思うんですよね。それがプレイにもいい面をもたらしていて、思ってることが話さなくても分かったり、お互いの良さと悪さもですけど、個々の特徴は他のチームよりもわかってますね。そこがヴェロスクロノス都農の強みだと思います。
ヴェロスクロノス都農の未来
ーこれからどうなりたいか教えてください
もちろんサッカーをやっている限り、トップを目指してやって行きたいです。まずはJFL昇格が目標ですが、このチームでどんどん上に上がって行きたいと思います。仕事については、今やっている指導者としてやっていけたらいいなとは思うんですけど、選択肢を絞るんじゃなくて、他の可能性もこれから探していきたいです。
ー最後に都農町の方にひとことお願いします
本当にいつも応援してくださり、ありがとうございます。皆さんに応援してもらえると自分たちの力になるんで、今シーズンも一緒に戦ってください!
伊藤 剛 選手の詳細プロフィールはこちら
- 2023.07.19
- 選手・スタッフ