2024.07.10

《選手&スタッフ インタビュー#28 》吉崎 弘宣選手インタビュー

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JL〜JFL〜地域L、全カテゴリーを渡り抜いてきた経験者 

力強い声で仲間の背中を押す、頼れる守護神 

チームから厚い信頼を受ける、吉崎 弘宣選手にインタビューにした。 

 

サッカーとの出会い


―サッカーを始めたきっかけは?

サッカーか野球かで迷っていたんですが、仲が良かった友達がサッカーをやっていたので、自然とサッカー派になっていきました。クラブに入って本格的にやり始めたのは小4の頃です。 

 

―小学生の頃は、どこのポジションだった?

実は、小4の頃からキーパーなんですよ(笑)

 

―ずっとキーパー!?珍しいですよね!?(笑)

多分珍しいと思います(笑)普通はフィールドプレーヤーをみんなやりたがると思うので。

 

―なにがきっけかで、キーパーに?

小4の頃に大会があったんですけど、たまたま1つ上のキーパーの先輩が家族旅行でいなくて。代わりを探していたコーチが、当時他の子より身長が高かった僕を見つけて「キーパーやってみる?」と声をかけてくれたのがキッカケです。そうしたら、その試合で結構シュート止められた記憶があって。たぶん楽しかったんでしょうね。試合後にコーチから「キーパーでやっていこう!」と正式に言われて、今に至ります。 

 

―じゃあ、その日からキーパー人生が始まった?

そうですね。今思うと、その試合がなかったらキーパーじゃなかったかもですね(笑)

 

―小学生の頃からキーパーのポジションが好きだった?

たまたまなんですけど、佐賀県の選抜選手をみているキーパーコーチが、自分たちのクラブもみてくれることになって。キーパーの基礎技術であったり、楽しさだったりを教えてくれたので、気がつけば、キーパーというポジションにのめり込んでいました。 

仲間を鼓舞し続ける吉崎選手

 

―指導者にも恵まれた環境だったんですね。

そうですね。町の小さなクラブだったんですけど、たくさんの方が熱心に教えてくれました。時には、選手のお父さんもコーチをしてくれたりして。ちゃんと成長できる場だったけど、雰囲気は和気あいあいとしていて、とても楽しかったです。

 

―他のポジションをやりたくなったりしませんでしたか?

今思えばやっときゃ良かったなって。点取りたいっす(笑) 
間違いなく、キーパーの選手はマジで思ってるはずです、「点とりたい」って(笑) 

 

―身長の高さもかなり関係していますよね、小学生の頃は何センチくらい?

たぶん、小学生の時点で160cmはあったと思います。実は最近も伸びてるんです(笑) 
こないだ(2024.4月)の健康診断で1cm伸びてて、188cmでした。それ以来、公式では188cmでいかせてもらってます(笑)

 

―30代でも身長ってまだ伸びるんですね(笑)

たくさん食べて、たくさん寝たら、まだいけるっす(笑)まだまだ成長期です(笑)

 

全国大会を経験して、高まっていくプロへの夢。 


―プロを意識し始めたのはいつ頃?

中学時代も、「夢はサッカー選手」って書いていたと思うんですけど、まだぼんやりっていう感じでしたね。本格的に意識し始めたのは、高校3年生(佐賀北高等学校)で出場できた、全国高校サッカー選手権のときです。『NACK5スタジアム大宮』っていう大宮アルディージャの本拠地で試合があって、サッカー専用スタジアムで、お客さんもたくさん入ってて。そんな中で、自分たちのプレーひとつひとつに歓声が沸く気持ち良さを味わったんです。その時に、なんていうんですかね、「快感」じゃないですけど、「もっともっと上のレベルでプレーできたら、楽しいんだろうな」って思って。そこから「頑張ってプロになってみたい」って、思いに変わっていきましたね。

 

―1つしか枠がないキーパー、どんな意識で臨んでいた?

フィールドと違って、やっぱり一つしか枠がないんですけど、ライバルであり仲間っていう意識が強いですね。フィールドでは見えないキーパー目線で考えられることもあるので、そこで意見を出し合ったり、支え合ったりもできるポジションです。もちろん試合に出場できなかったら悔しいですけど、そこは試合が始まったら、リスペクトの気持ちをしっかり持って、自分たちでチームをまとめて、試合に勝ちにいくっていうのを意識していましたね。 

 

―高校生の頃は1年生からレギュラー?

いや、レギュラーになれたのは高3になってからです。やっぱり1つしか枠がないので本当に難しいポジションなんです。高1と高3では身体の大きさも全然違うので、ついていくのに精一杯でした。「どれだけいいプレーを盗むか」だけを考えて必死で練習していました。

佐賀北高等学校時代の吉崎選手

 

“新しい世代にも伝えていきたい” サッカーと並行して取得した教員免許 


―高校卒業後の進路はどう決めた?

教師の免許を取りたいと思って、教員免許がとれる岡山県にある『IPU・環太平洋大学』を受験しました。叔母が山口で教員をしているんですけど、スポーツにも力を入れていて、かつ教員免許もとれるっていうことで、この大学を探してくれて。自分の代で5期生っていう、すごく新しい大学だったんですけど、サッカーも実力があったので、学生サッカーリーグで上にいけば全国のスカウトが見てくれるかもしれないと思って、ここに進学を決めました。 

 

―実際に、教員免許はとった?

しっかり、とりました!

 

―すごい!何の教科の先生?

小学生は全部教えることができるのと、あとは中高の体育を教えられます。 

 

―教師という夢をもったきっかけは?

高校の恩師の存在が大きいです。授業だけでなく、イベントごとにも熱心な人で、「全力で高校生活を楽しめ」と教えてくれました。サッカーに対しても本気で向き合ってくれる方だったので、「こんな風にサッカーを教えられたら、おもろいやろうな」って思うようになって。それで教員免許の取得も目指すようになりました。 

 

―サッカーも教えられる先生になりたいと?

そうです。なので、中高の教員免許もとっておきたいと思って頑張りました。

 

―でも、サッカーもやりながら大変じゃなかった??

そうですね、高校と変わらないくらいちゃんと大学に通っていました。4限まで終わって、すぐに移動して夜の9時まで練習って感じで過ごしてましたね。 

 

“爪痕を残す”精神で勝ち取ったJリーグへの道  


―大学4年間でさらにプロを目指すきっかけになったことは?

2回生のときに夏の総理大臣杯で、松田陸選手・力選手の双子率いるびわこ成蹊スポーツ大学と対戦したんです。相手が1人退場して10人対11人になったんですけど、それでも押されてしまうくらい相手強くて。ただ、追い込まれているけど、何回かシュート止めることができたんです。その後の筑波大学の試合も、負けているけど、セーブできた場面もあり「自分まだいけるかもしれない」と思っているときに、Jリーグのスカウトの方から練習に参加しないかと声がかかりました。だから全国レベルの試合に出場できる機会って数少ないチャンスですけど、そこで“どれだけ爪痕を残せるか”、“常に準備をし続けることが大事だ”と改めて思いました。

 

―それから、さらにスカウトがあったんですよね?

4回生のときのデンソー杯で、伊藤純也選手(現:仏/スタッド・ランス)がいる関東B選抜と対戦したんです。相手が強いチームかつ、その試合が同時に行われる他の試合よりキックオフが早かったこともあって、スカウトの人も結構見にきてくれてたんですよ。そこで自分的にいいセーブが結構あって。チーム自体は8位だったんですけど、その試合の印象がたぶんよくて、4回生の夏に『ヴィッセル神戸』から練習試合によばれました。

 

―すごい!練習試合ではどうだった?

残り20分もなかったんですけど、出場させてもらって、たしか1ー2で勝っている場面で、そのまま抑えて勝利できました。結構1発勝負に強いというか、いい意味で後先考えずにハッタリとかかませるタイプなんで(笑)「いつも以上に声出してやったろう!」みたいな感じが、うまいこと伝わったみたいで。その試合後に「練習参加してよ」って声かけてもらって『ヴィッセル神戸』の特別指定選手になりました。

 

―実際に特別指定選手として、練習に参加してどうだった?

1〜2ヶ月しっかり練習に参加させてもらって、最初は全然目が慣れなくて、ついていくのがやっとでした。ただ、キーパーってスピード感には慣れる部分もあるので、全然できないレベルじゃないとも同時に感じました。その場に入って、いかに順応できるかが大事だと思いながら必死にやりました。少しずつ自分のプレーが出せるようになって、改めて周りのレベルによって自分のレベルも変わっていくんだなと感じて自信もつきました。

 

―プロの技術って具体的に何が違う?

ひとつひとつのスピードもそうやし、キーパーの技術でいったら、相手がいる場所によって弾き方を絶妙に調整するんです。あえて回転をかけてコーナーに逃げたり、弾き方一つにしても、そこまで考えてやってるんだと感じることが多くて。ただ何となくやってるんじゃなくて、ひとつひとつのプレーに理由があるというか、がむしゃらにやるだけが大事じゃなくて、“プロは考えぬいてサッカーをしている”っていう大きな学びがありましたね。

 

―すごすぎる!とか思った選手いました?

マルキーニョスって言われるマルコス選手(‘14〜’15ヴィッセル神戸)のシュートの外し方、タイミングの外し方がすごすぎました。強襲も打てるし、カーブかけたり、落とせたり、いろんな球種も持ってるんですけど、中でも駆け引きの上手さですね。「そのタイミングでくるか〜」っていうのが多くて。ちゃんと相手の足のシュートブロック来た時の股を狙っていたりとか、「そこに足伸びてくるんや〜」っていう。想像を超えてくる感じの凄さでしたね。 

チームメイトに指示を出す吉崎選手

 

全カテゴリを経験。もう一度、上のステージへ 


―特別指定選手後はどういう進路に?

今だったら、特別指定と加入がセットなんですけど、自分の時は加入してなくても特別指定選手として登録できたんですよ。なので、ゆくゆくは契約してもらえるようにと思って頑張ってたんですけど、そこまでには至らず。ただ、『ガイナーレ鳥取』につないでもらってそこで2年間プレーしました。 

 

―社会人になって最初の2年って結構大きいですよね。今後のことを考えると、どんな気持ちでプレーしていた?

試合に出るためにはどうするかばかり考えていました。初めてサッカーだけの生活になって、フィジカル的にも練習が厳しいコーチだったので、居残り練習をしっかりやっていただいて。成長できたと思う反面、やっぱり試合に出場できないもどかしさというか。自信あると思っていても、上には上がいるなと。1枠しかポジションがない中で難しいですけど、いかにモチベーションを高く保つか、セカンドキーパー同士、一緒にご飯食べながら、「どうやってます?」と話し合ったりして。 

 

―実際にどうやってモチベーション保っている?

ん〜。難しいですけど、風呂入ってサウナ入って、水風呂入って、あとはスッキリする(笑) 

 

―(笑)でも、それでスッキリしたと思うしかないですもんね

そうですね。でもやり続ける、今まで通りやり続けて、プラスいいところを盗む。レギュラーの選手がケガした時も、そこでチャンスって思っちゃダメなんですけど、キーパーっていうポジションは1度信頼を得られたら、続けられるポジションなので、「いつチャンスが巡ってきてもいいように準備だけは絶やさずにやろう」っていうのを心に持ってやっています。

 

―その後、『MIOびわこ滋賀』〜『アルテリーヴォ和歌山』とプレーをして、何がきっかけでヴェロスクロノス都農へ?

関東であったキーパーセレクションを経て「獲得したいと思っている」と根本強化部長からお電話をいただきました。

 

―チームの雰囲気はどう?

1月に加入したばかりなんですけど、めっちゃいいと思います。若手と中堅のバランスがちょうどよくて、練習もほどよい緊張感でできています。上を目指せるチームだと思います。 

 

―シフトプラス都城本店での仕事はどう?

パソコン関係の仕事が初めてだったので、教えてもらうことばかりです。情報システム部にきた依頼に対応するのが主な仕事です。使い方の質問が来た時に、同じ内容で今後質問が来るかもしれないから、そのマニュアルを作っておいたり。新しい営業所に入られた方へパソコンの初期設定をして発送したり、日々勉強しながら仕事しています。 

練習後、仕事に打ち込む吉崎選手

 

―改めてヴェロスに入ってどう活躍したい?

自分の強みは、シュートストップと声で味方を動かして協力してゴールを守ることなので、 盛り上げながらチームをまとめていきたいです。 

 

―年下の選手とは、どうコミュニケーションとるように心がけている

「話をちゃんと聞く。話を聞いてから喋る、意見する」ようにしています。なるべく後輩に気を遣わせないように、イジりやすいキャラでいれるように心がけています(笑)

 

―全カテゴリを経験してきて、後輩に伝えていけることも多い気がします 

いろんなチームや、いろんな監督・選手を見てきたので、どうやったらいい雰囲気のチームになるかは割と理解できている方だと思います。試合に出て活躍することが一番ですけど、チームとして“JFL昇格”っていう目標がある中で、試合で活躍する以外にも、一人一人の役割ってあると思うんです。例えば、気分が乗らない選手に対して、「やろう!」っていう風に鼓舞する声も必要だと思うし、ピリッとさせるのはベテランの仕事かなと思っています。だから、なりたいわけじゃないですけど、嫌われ役というか、そのチームにとって良くなることだったら、率先してやっていくつもりでいます。

 

―経験豊富な吉崎選手からみて、ヴェロスはどんな伸びしろがある? 

本当に一人一人の技術は高いと思うので、JFLでも全然通用するレベルにはあると思います。ただ、地域チャンピオンズリーグで優勝しないと上がることができないので。そこまでにやっぱチームとして成熟させるというか、一番いい状態に持ってくために、全員が同じ方向を向くっていうのがやっぱり大事だと思います。みんな仕事をしているっていう、サッカーだけじゃないところも、逆に自分は強みだと思うんですよね。地域おこし協力隊やシフトプラスなど、同じ場所で一緒に仕事している選手が多いので、そこで常にコミュニケーションを取れる環境は良いと思います。

 

―これからの目標を教えてください 

このチームで上に上がるっていうのを目標に九州に帰ってきたので、現状試合に出場できない中ですけど、決して腐らず、監督の目指すサッカーをしっかりもう一度自分の頭の中に入れて、もう一段階ギアを上げて、いつチャンスが来ても自分の最高のプレーを出せるようにチャレンジしていきたいですね。

 

―何歳まで現役で頑張る?

やれるとこまで。身体はまだ全然イケてると思うんで。やれるところまで、突き進みたいなって思っています。 


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2024.07.10
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